イントロ
「フォークソング」ってよく聞くけど、結局なんなの?
というのが私の長年の疑問でした。
長きにわたる疑問に決着がついたので、同じ疑問を抱くみなさんにも勝負の行く末をご報告したいと思います!
今回は日本におけるフォークミュージックについてまとめています。
アメリカのフォークについてはこちらをどうぞ。
🐥<え・・・何が違うの?
そんな皆さんはぜひ続きを読んでみてください◎
もくじ
ごった煮??
結論から言いますと、現在日本におけるフォークというのは、あらゆる音楽ジャンルのごった煮です。
アメリカ・アパラチア民謡、ブルース、カントリー、R&B、ロック、そして歌謡曲・・・。
こういったいろいろなジャンルの音楽要素を持った楽曲を原則アコースティック調に、そして哀愁をこめて歌い上げたもの、それがフォークミュージックなのです。
🐰<ピンときません
そう、これがフォークのむずかしさなのです。
「で、結局なんなの?」となりますよね。
日本の「フォークソング」という言葉には、時代の過程であまりにも多くの要素が入りすぎているため、「これ」と定義づけて捉えるのが非常にむずかしいのです。
では、なぜ日本の「フォーク」にはあらゆる音楽の要素が含まれているのか。
そうなるに至ったフォークの時代の流れをザックリと見ていきましょう。
超ザックリ日本フォーク史
~あらすじ~
1930年代、アメリカで収集されていたフォークソング=アメリカ民謡は、1958年頃からのフォーク・リバイバルで最盛期を迎えました。
(アメリカフォークの詳細が気になる方はこちらへ↓)
うたごえ運動
1950年代、戦後の日本では”うたごえ運動”というものが各地で興っていました。
これは合唱団の演奏を中心とした政治運動で、共産主義の考え方に基づき、革命や平和についての歌を歌って大勢に抗議をする、という活動でした。
労働運動や学生運動とも結びつき、50~60年代に最盛期を迎えます。
フォーク、来日
さて、1958年のアメリカでのフォーク・リバイバルの影響はとてつもなく、日本にも大きな波をもたらしました。
しかし、入ってきたのは「民謡からはじまった音楽を人々のもとに取り戻そう!」というフォーク・リバイバルの精神のほうでなく、アメリカ民謡から派生し、ポップスに近しくなったフォークソングの楽曲群そのものでした。
フォークの元の「民謡」や「反骨」という考え方云々よりも、「アメリカで流行ってるポップスかっけえ!」という感じで、日本でも流行しはじめた、ということですね。
これが日本における初期のフォークソングとなるのですが、「アメリカで流行っているポップス」という認識があった半面、50年代からのムーブメントであったうたごえ運動の要素も加わっていたことにより、「フォークソングには革命をもくろむ反政府的な要素もあるな・・・?」と、政治とはビミョーな関係でもあったようです。
この頃から全世界的に共産主義の流れがあったことによって、当時の日本のポップスとなったフォークにも革命・反体制の要素が入ったのでしょうね。
お坊ちゃんフォーク
ポップスとしてのフォークは、「アメリカの音楽カッケ~!」となった私大の大学生たちに広まります。彼らは富裕層の親を持ち、自由主義をルーツとする東京の大学へ通う学生たち。
手軽で、欧米のカッコイイ香りのするフォークはどんどん広まり、次第にカレッジ・フォークやキャンパス・フォークと呼ばれるようになりました。
自由主義の大学に通っていることからもわかりますが、彼らが憧れたのは共産主義のメッセージを持つ音楽ではなく、あくまで「アメリカのポップス」。
ですので彼らが演奏する楽曲に政治性はなく、また、原語・原曲を大事にするコピーが中心でした。
こうしたカレッジ・フォークの高まりの中、「若者たち」など、ドラマ主題歌としてフォークソング風歌謡曲がヒット。
●若者たち
この頃流行ったフォークソング風の楽曲は、歌手ではなく作曲家や作詞家が作ったものであり、またやはり政治性やメッセージ性も無かったため、曲調をそれらしくした「なんちゃってフォーク」でした。
しかしこれが、フォーク・ブームの幕開けとなります。
これ以降、日本語によるオリジナルフォークが作られていくことになります。
関西より反骨をこめて
せっかく起きたフォーク・ブームでしたが、1965年のボブ・ディランショックもあいまり、一時その地位をロック=当時のGS(グループサウンド)に奪われてしまいます。
ビートルズの登場により全世界的にロック旋風が吹き荒れていたため、この流れはもうどうしようもありません。
しかしその後GSブームが下火になった頃、ふたたびフォークの波がやってきます。日本におけるフォーク・リバイバルといった感じですね!
その頃東京と同じくらいフォークが栄えていたのが関西でした。
きっかけは、ボブ・ディランらと共に反戦を訴えていたフォークシンガー、ジョーン・バエズが来日、大阪にてベトナム反戦を熱弁したこと。
東京で流行していた政治性のないフォークを批判するような形で、関西フォークという大きなジャンルが生まれました。
この関西陣によるフォークは、商業音楽を脱し、シンガーが自身オリジナルのプロテストソングを歌う、という、アメリカのリバイバル時のフォークに近しいものでした。
1967年、京都の学生グループであったザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」のメガヒット、そして学生運動や安保闘争などの時代の流れも後押しし、関西フォークが時代を席巻します。
新世代の登場
1970年代になると、プロテストの色を強めどんどん閉鎖的になっていくフォークソングに異を唱え、とあるミュージシャンがそれまでの流れに風穴を開けます。
吉田拓郎です。
彼はフォークの曲調をそのままに、内容を政治や反体制的なものから、身の回りのできごと、恋や人間関係といったごく個人的な内容に変えました。
当時は過激なまでの批判を受けた吉田拓郎でしたが、その音楽性や姿勢に賛同したミュージシャンたちが、次々に個人主義なフォークソングを発表しはじめます。
吉田拓郎をはじめ、かぐや姫、井上陽水、中島みゆきらが作り出した「政治から離れた個人的なフォークソング」はニューミュージックと呼ばれるようになり、たくさんのヒットを記録します。
こうしてフォークはふたたびポップスの表舞台へと返り咲き、そのうち、J-POPと呼ばれるようになりました。
~END~
結論、フォークとは
こんなわけで、アメリカでは
- 民謡から派生
- 政治や体制に対する反骨精神
- アコースティック調
- 悲観性
- これらから派生する音楽
を特徴とするフォークですが、日本においては
とその特徴をあいまいにしています。
また、70年代にヒットを飛ばしたミュージシャンたちが、それぞれR&Bやロックにも大きな影響を受けていたこともあり、アコースティックだけでなく、他の音楽の曲調がまざっていてもOKという懐の深さっぷり。
ただ、こうして時代の流れを見ていくと、うたごえ運動の影響を受けていた初期にも、関西フォークの起こりにも、それまで日本にあったものに対するプロテストの精神がフォークにはあります。
また、政治性から離れた吉田拓郎ですが、その個人主義音楽もきっかけは当時の政治的なフォークに対する反抗=プロテストであり、その音楽性を守る活動も、やはり猛烈な批判に対する戦いの連続であり、反抗であったはずです。
ですのでまとめると、現代における日本のフォークとは
- フォーク史のどこかに影響を受け、
- アコースティックの要素があり、
- メジャーに対する反骨精神があり、
- また、哀愁を含んでいる
音楽ジャンルのことを指すのではないか、と思います。
(哀愁に関しては、もとのフォークにみられる悲観性のほか、日本のフォークに感じられる独特の物哀しさを汲み取ってみました。)
これでも結局とらえようによってはメチャクチャ広いのですが、あとは作曲者本人がどこまでフォークを意識しているか、というところに委ねられると思います。
※ちなみにこの定義は筆者のごく個人的な考察によるものです。
おすすめ曲5選
ここからはおすすめを5曲ご紹介します!
代表曲もあればシンプルにおすすめしたい曲もありますので、『日本のフォーク』を感じるにはうってつけのプレイリストです◎
帰って来たヨッパライ - ザ・フォーク・クルセダーズ
♪おらは死んじまっただ・・・のフレーズと早回しのサウンドを聞けば誰もが「ああ、あれね」とわかるこの曲。
コミカルソングだとさわりだけ聞いて終わらず、今日は最後まで聞いてみてください!
草津節からの引用、般若心境×ビートルズのワンフレーズ、エリーゼのために・・・そして随所にちりばめられた、コミカルでありつつもちょっぴり不気味さ・不穏さも感じるさまざまな演出。
約3分半の中に工夫がつまったスゴイ1曲です。
こういうのを作ろう、という心が音楽に必要かも。
翼をください - 赤い鳥
合唱曲で有名なこの曲も、もとはフォークソングです。
歌パートもいいですが、イントロや間奏のちょっとした部分もとてもセンチメンタルですよね・・・。
昏迷の時代に、比喩でもおおげさな表現でもなく、心からこう感じてこの曲が歌われた、そして人々が共感したという背景を考えると、自然と泣けてきます。
フォークはその曲調のシンプルさゆえに、歌詞やメロ、楽曲の骨格が浮き彫りになりますよね。だからこそその骨格のよい音楽が多い気がします。
私たちの望むものは - 岡林信康
関西フォークの代表格・岡林信康です。動画はあのはっぴいえんどがバックについてのライブ映像。豪華ですが、はっぴいえんどに全く負けない、岡林信康さんの圧倒的な存在感がすごいです・・・。
政治運動がさかんに行われていた頃から時代は変わりましたが、大きな力を前にした時の人々の苦しみや絶望は時をこえても変わりません。
時代をこえて、苦しみを代弁してくれる曲です。
阿部芙蓉美さんのカバーも素敵です。
●カバー
外は白い雪の夜 - 吉田拓郎
レジェンド・吉田拓郎さんの楽曲もぜひおすすめさせてください!
こう聞くと、確かに上記の3曲よりぐっと個人的な楽曲ですよね。自分のことに置き換えて聞きやすいですし、身の回りの単語が出てくることで、情景も想像しやすいです。
吉田拓郎さんなら「結婚しようよ」の方をご紹介すべきだったかもしれませんが、この曲があまりに良すぎるので・・・!!!
「さびしい」「愛してる」なんて直接的な感情表現はあまり登場しないのに、別れ行く2人の寒い夜があまりにありありと浮かんで、胸を刺すような深い愛情と、同じだけの哀愁を感じさせます・・・。
傘がない - 井上陽水
最後はかぐや姫と悩んだのですが・・・陽水さんの名曲を!
フォークと呼ぶには素朴でなさすぎる笑、ドラマチックな展開が魅力です。
都会では自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない
引用元:井上陽水 傘がない 歌詞&動画視聴 - 歌ネット
ニューミュージックを象徴する個人主義にも取れますが、どこか皮肉を感じる気もするし、ちょっと不思議な歌詞だからこそ、人によってあらゆる解釈ができそうですし、その余地のある曲です。
陽水さんの楽曲はどれも何か「余地」を感じて、聞いていておもしろいのです。
まったく色褪せません。
アウトロ:そう思ったらそう
いかがでしたでしょうか!
だだっ広いフォークの海をなんとか自分なりにまとめられたかな、という反面、「やっぱりジャンルってけっこうあいまいだな~」とも感じた回でした。笑
結局は作り手・そして聞き手のとらえ方によって変わりますから、よくわからなくなってきたら、「フォークって思ったらフォーク」、これでよいと思います。
今回は記事の中におすすめフォークソングを入れられなかったので、次回以降おすすめのフォークソングもご紹介したいと思います!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
また次の素晴らしい音楽でお会いしましょう◎
Have a nice music!
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