イントロ
スピッツの曲の大きな魅力・・・
ボーカル草野さんの声や楽器陣のうまさ、メロの良さそして(以下略)はもちろんですが、歌詞もその1つですよね!
今回「雪風」という曲に出会い感銘を受け、歌詞の分析をしてみました!
すると「雪風」のさらなる良さだけでなく、スピッツの曲の歌詞がなぜこんなに響くのか、そのヒミツもわかってきました。
こんな皆さんにぜひお届けしたい内容となっています!
ぜひ、曲を聞きながらお楽しみください◎
「雪風」とは?
2015年4月にリリースされたシングル曲です。
2016年リリースのアルバム『醒めない』にも収録されており、こちらはアルバム用にボーカルを録りなおしたバージョンとなっています。
シングルバージョンは『CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection』に収録されています。
◆雪風Sg
「雪風」歌詞分析
歌詞はこちらからごらんください。
内容
雪景色の中、”君”とふざけあい、時にはいっしょに無謀な挑戦もして過ごした温かい日々のことを思い出し、遠くにいる”君”の背中を押す内容となっています。
短い曲の中に愛情がつめこまれた温かい曲ですね。
シビアなワードin温かい曲
最初に聞いた時、2番Aメロ頭の”現実”というワードにとても驚きました。
思い出の回想をたゆたう1番に対して、ものすごくシビアなワードだと思いませんか?
しかもAメロの頭なのでものすごくはっきりと聞こえて、なんだかドキッとさせられました。
この優しく温かい曲にあえて”現実”という重たいイメージの言葉を、しかも聞き取りやすいAメロの頭に置いたことによって、この曲がただ優しい思い出の夢の中だけを歌っているのではなく、今は会えないという現実の中にあってもお互いに真っ直ぐ生きていこうね、というような前向きさを表現しているように思いました。
また、”現実”という言葉のシリアスさが次のフレーズの”もう会えない”の感情をより引き出しています。2番Aメロのセンチメント加減に、まずここで泣きました。
つぶやくような「お願い」
歌詞を見るとサビの頭ではありますが、ほとんどAメロの延長みたいなパートに置いてあり、とてもさりげなく歌われる ”お願い”。第2泣きポイントです。(給水地点を作れ)
メロディの上昇と共にサビを大きく盛り上げる・強調するパートです。そこに”お願い”というそれ自体で十分切実なワード、しかもさりげなく歌うことでよりその切実さがブーストされて、心からの強い祈りなんだなということが十二分に伝わります。
そんなに切実に強烈に何を ”お願い”したのかな、と次が気になりますし、しかもそのお願いした内容は "無敵の微笑み 見せてくれ”ですよ。ウ・・・。(泣いてる)
メロディに言葉を選ぶセンスがピカイチですよね。この部分に他の言葉はもう考えられないというくらい、感情をかきたてる素晴らしいチョイスです。
スピッツの歌詞全般、ここがいい
ここからは「雪風」の分析をしながら感じた、他のスピッツの曲の歌詞にも共通する良さを挙げていきます。
うますぎる比喩
1番Aメロで登場する ”巻き戻しの海” ってなんだろう・・・と考えたのですが、【同じ思い出を何度も振り返る(=巻き戻す)、心の奥底(=海のようなところ)】のことかなと思いました。
言葉で説明するとこんなに長く味気なくなってしまうことを、 "巻き戻しの海” という、端的で情緒のある表現に集約できる比喩のうまさ。これはスピッツのすべての曲に散りばめられていますよね。「空も飛べるはず」なら ”幼い微熱” がそうです。
身近なワードの使い方
スピッツの曲の歌詞には抽象的な表現も多く、改めてじっくり考えると実際に何を指しているのかよくわからなくなってしまう箇所もあります。
その文学性が最高に好きなのですが、もしそういった内容だけで曲が終わってしまったら、「よくわからない曲だったな・・・」という感想になってしまって、心に残りませんよね。
しかし草野さんは歌詞に身近なワードを多く使っているため、そうした抽象的な表現でも、なんとなく内容をイメージできるようになっているんです。
「雪風」だと "エイ" もそうですし、”涙が渇いてパリパリ” も、やってみたことも無いのに、なぜか鮮明にイメージできますよね。
文学的かつ誰にでもイメージできるような表現、そのバランス感覚が絶妙です。
圧倒的に、自然。
個人的に1番大きな要素かも・・・と感じたところです。
「雪風」1番サビの ”すごく懐かしいだろ?”。
「すごく懐かしいだろう」でもいいはずなんですが、前者の表記の方がいつも話しているのと同じような自然な口調で、柔らかさと親近感がありますよね。
また、歌詞を全体を通して読んでみると、
- 文章の切れ目、場面の区切り方に縛りがない
- メロディの上がり下がりと言葉の発音が合ってる
- メロディの音数と言葉数もマッチしてる
- 使っている言葉が優しい
こんな特徴があって、それらすべてが聞く人の耳にスッと入ってくる自然さ、ナチュラルさを作り出しているのです。
この自然さが聞く人を選ばず多くの人の共感を引き出しているのでしょうし、無駄に飾り過ぎない素朴さがかえって楽曲の説得力を強めているのだな、と感じました。
ただ、自然を表現する、というのはすごく難しいことです。飾り立てるよりずっとずっと。何かの事柄を難しい表現とたくさんの言葉で説明するのより、誰にもわかる簡単な言い方でシンプルに伝えるほうがずっと難しい、というのと似ています。
誰の心にもその情景と想いを呼び起こさせるような、かつ違和感なく受け入れられるような、そんな表現を草野さんは試行錯誤して探してきたのだろうな、と思いました。
だからこそ、スピッツの曲の歌詞はこんなにも沁みるし、世代を越えた多くの人の心を支えてきたのだろうな、と。
アウトロ
聞きながら書いていたらものすごくしんみりしてしまいました。良い曲すぎてつらくなってきた。
今回記事に載せたこと以外にもたくさんの発見があり、たった1曲を分析するだけでこんなにも勉強になって、しかもこんなに深く感動できるのか・・・と驚きました。
これからもスピッツの曲、そして他のアーティストによる名曲たちも、どんどん歌詞分析していきたいと思います!
みなさんも、時にはお気に入りの曲の歌詞、分析してみては?びっくりするほど新しい感動に出会えること、うけあいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
また次の素晴らしい音楽でお会いしましょう♪
Have a nice music!
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