イントロ
夏の曲といえば、
ジャズでよく聞く”Summertime”!
みたいな軽い気持ちでこの曲について調べ始めたのですが、思いのほか胸を打たれる結果となりました。
アンニュイで、悲しいもカッコイイ。
けれど、実は希望を眼差している。
「”Summertime”もジャズも聞いたことない!」という方も、きっと新しい扉を開くことができるはず。
ほんの少しでも興味を持ったなら、ぜひ聞いてみてください。
”Summertime”って?
ガーシュウィン作のオペラ曲
1935年、ガーシュウィンがオペラ『ポーギーとベス』のために作曲した曲です。
一度聞くと忘れられないブルージーな雰囲気、重たくシリアスな曲調、悲しげな音使い(マイナー調といいます)が特徴です。
ガーシュウィンは1916年から1937年まで活躍したアメリカの作曲家。
クラシック、そしてジャズのような大衆音楽のどちらの分野でも名曲を残し、今日のアメリカの音楽を作った、とまで言われています。
あの有名なクラシック曲「ラプソディー・イン・ブルー」もガーシュウィン作曲。まさに今日でもアメリカで、いや世界中で愛されている曲ですね。
いや、ジャズって言ってなかった?
「ジャズじゃなくてオペラやんけ!」
と盛大にツッコまれそうです。
このオペラ『ポーギーとベス』は、当時の黒人たちの社会や生活を描いた作品でした。
この作品のためにガーシュウィンは、黒人世俗やその音楽を研究し、自らの曲に取り込む形で、劇中歌を完成させました。
そのため”Summertime”にも、それ以外の劇中歌にも、ブルースやジャズといったブラックミュージックの要素が盛り込まれています。
上演後、ビリー・ホリデイがこの曲をカバーしたことで、”Summertime”は大ヒット。
といった名立たるジャズミュージシャンたちがこの曲のカバーを演奏し、”Summertime”はジャズのスタンダードナンバーとして、現在まで歌い継がれることとなったのです。
ジャズミュージシャンだけでなくポップス・ロックなどさまざまなジャンルのミュージシャンがこの曲をカバーしていて、その数は何千とも。
カバーについてはのちほどご紹介いたします◎
どんな歌詞なの?
この曲はオペラの中で、序章と中盤に登場します。
女中のベスが赤ちゃんをあやす子守歌です。
夏になれば
生活も楽になる
魚が跳ねて
綿の木も高く伸びるでしょう
パパはお金持ち
ママは美人さん
だからいい子にね
どうか泣かないで
いつの日か、ある朝に
あなたはきっと
立ち上がり歌い出す
翼を広げて
空へ飛び出していくのよ
その朝まで誰もあなたを
傷つけたりしないわ
パパとママがそばにいる
そばにいるわ
そばにいるわ、ベイビー
参考:George Gershwin – Summertime Lyrics | Genius Lyrics
序章ではただ単に子守歌なのですが、中盤ではこの赤ちゃんの父・ジェイクも母・クララも嵐に巻き込まれて死んでしまい、そのシーンの直後にも、この曲が歌詞を変えて歌われます。
その展開を知って歌詞やメロディを聞きなおすと、何かこの悲しさも暗示されていたような、それでも前向きに終わる歌詞が痛々しくも美しいような、いろいろな感情がこみあげてきます。
ジョン・コルトレーン、そして長崎
サックス奏者の名手、ジョン・コルトレーンもこの曲をカバーしています。
彼は1966年、コンサートの際に長崎を訪れ、自ら長崎の爆心地・浦上へ赴き、献花をしました。その公演の最後に演奏されたのがこの”Summertime”です。
さきほど紹介した”Summertime”の歌詞などと照らし合わせると、一瞬で当たり前の幸福を奪われた夏の日、それでもどんなことがあっても明るい未来を祈り、切望する・・・というような内容がなにか広島や長崎での悲劇と重なり、日本人として深く深く考えさせられます。
戦争や差別のない、大切な人が明日も当たり前に生きていける平和な世界というのは、全世界、全時代の人間の共通の願いなのだな・・・と気が付きました。
『ポーギーとベス』、そして”Summertime”の歌っている内容はごく個人的な生活の中での話ですが、だからこそ悲しみを身近に、リアルに感じさせられます。
至極のカバー
最初にご紹介したオペラでの”Summertime”も最高ですが、名ジャズプレーヤーによるカバーもシビれます!
ビリー・ホリデイ
第二の本家といえそうなビリー・ホリデイのカバー。
なんて良い声なんでしょう・・・。
ルイ・アームストロング×エラ・フィッツジェラルド
哀愁と甘やかさを煮詰めたジャムみたいなカバー。
つい何度もリピートしてしまいます。
マイルス・デイヴィス
シンバルやバックのリフが都会的でおしゃれなアレンジ。
このシンバルパターンを聞くと『バーで流れてそうなやつだ・・・』となる
レイ・チャールズ
R&Bやソウルの演奏家・レイ・チャールズのカバーは、意外になかったピアノアレンジ。
歌詞も歌うというより話すに近く、この曲調とテンポであってもどこか躍動感を感じました。ソウルフル。
ジャニス・ジョプリン
最後はロックの名手によるカバーを!
エレキなのはもちろんリフとかもう全然違うし、「違う曲です」と言われたら納得しそうなほど大胆なアレンジ!
アウトロ
”Summertime”を劇中歌としたオペラ作品『ポーギーとベス』は、決してハッピーとは言えないながらも、ポーギーの前向きな姿勢で幕を閉じます。
”Summertime”の歌詞にもあるように、どんなときにも最後には「立ち上がり歌い出す」明日を夢見ていきたいですね。
また、今回の記事でガーシュウィンにも、オペラにも、ジャズにも改めて興味が湧きました!う~ん、音楽って本当に深い・・・!
読んでくださり、ありがとうございました!
また次の素晴らしい音楽でお会いしましょう♪
Have a nice music!
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