イントロ
小説を読んでいると、作中に楽曲が登場することがあります。
いつもはなんとなく読み飛ばしてしまいますが、この楽曲をひとつひとつ聞いて考察していけば、物語がさらに深まるのでは・・・?!
しかも、新しい名曲に出会うチャンスでもあるのでは・・・?!!
というわけで、今回はよしもとばなな先生の「スウィート・ヒアアフター」を題材に、作中の楽曲をご紹介しながら、小説の新しい楽しみ方もご提案していきたいと思います!
✅吉本ばななさんの作品が好きな方
✅「スウィート・ヒアアフター」が好きな方
はもちろんのこと、
✅本作は知らないけど読書が好きな方
✅本は読まないけど音楽は好き
✅深く考えることが大好き
✅ていうか考察厨
こんな皆さんにも楽しんでいただけるはず◎
もくじ
「スウィート・ヒアアフター」?
「スウィート・ヒアアフター」は2011年11月に初版が発行された小説です。
作者は「キッチン」で人気を博したよしもとばなな(※現在は吉本ばなな)先生。
主人公は事故で恋人を亡くし、自身も鉄の棒がお腹に突き刺さり、生死をさまよいます。
一命をとりとめますが、残ったのは大切な人を喪ったからっぽな自分。
事故前とは一切が変わってしまった人生観で、死と、そして「生きていく」ということを見つめ直す、再生の物語です。
東日本大震災で苦しんだ人々へ向けて書かれたという本作は、重すぎず、しかしいつも心のどこかに悲しみがいついているような、喪うという情景のリアルさが描かれています。
けれど生と死とが単なる分断ではないこと、時が悲しみをさらうにつれ見えてくる「一緒に生きてきた」ということの美しさもまた同時につめこまれている名作です。
小説×音楽=枝豆とビール
突然ですが、ここで読書の新しい楽しみ方を提案します💡
それは「音楽をそえる」!
「スウィート・ヒアアフター」のように作中に楽曲が登場する作品は少なくありません。よしもとばなな先生の代表作「キッチン」には菊池桃子さんの「ふたりのNIGHT DIVE」という曲が登場しますし、村上春樹さんの「ノルウェイの森」はそのまま、ビートルズの楽曲名ですね。
また余談ですが、小説や本の物語から着想を得て書かれた楽曲というのも少なくありません。クラプトンの「いとしのレイラ」も、もとはペルシア文学の物語から来ているとか・・・。
小説(本)と音楽との相性の良さは、まさに枝豆とビールです。枝豆はビールをおいしくさせ、ビールは枝豆をおいしくさせるわけです。そして無限ループ。
ビールが飲めない皆さんは、ピザとコーラ、和菓子と紅茶、アンパンと牛乳でご想像ください。
そんなわけで小説を楽しむ時に音楽をそえて、聞きながら読んだり、読んだ後聞いたり、聞いた後読んだりすることでおもしろさが格段にアップするのです。
しかしなかにはもちろん楽曲の一切登場しない作品もあります。そんな時は・・・というのは長くなりそうなので、次回あたりに熱弁したいと思います。笑
あ~~~、音楽は本当に良いですね!!!
(気持ち盛り上がり過ぎ)
本作収録曲(?)
曲一覧
いい加減に本題にいきたいと思います。
「スウィート・ヒアアフター」に登場する楽曲はこちら!
・”Lover Lover Lover” / Leonard Cohen
・「たき火」(童謡)
・「遺言」/ 柳ジョージ
・「宝島」/ 町田義人
掘り下げてみると、どの曲も物語と密接にかかわる大事な役割を担っていました。
以下、考察を語っていきたいと思います!
⚠なるべくネタバレはしないようにしますが、どうしてもある程度先の展開は出てきてしまいます。
ですので、ここまで読んで「スウィート・ヒアアフター読もうかな・・・」となった方は、この先は読まないほうがいいかもしれません・・・!
1.Lover Lover Lover / Leonard Cohen
この曲は冒頭に和訳も出てくるほど、この物語と密接に結びついた曲です。
父(おそらく神様のこと)に苦しみを訴えかける内容の歌詞となっています。
「恋人よ、愛する者よ、私のもとに戻ってきなさい」
あらすじや冒頭の展開からこの歌詞を読むと、亡くなった恋人に戻ってきてほしい・・・という意味を重ねあわせてあるのかな、と感じます。
しかし全体を通してこの歌詞に立ち戻ると、そうではなくて、「生も死も本当は一体で、それほど遠いところにあるわけではない」というこの小説のメッセージの核をこの曲に託していたのでは・・・と思いました。
とてもしぶくカッコイイ曲なのですが、どことなく曲調がダウナーで、事故の場面を思うとなにかたまらない気持ちになってきます。すごい臨場感です。
2.たき火(童謡)
これはひょんなことから出会う青年・西方あたるから、彼と彼の母・さざんかの名前の由来を聞くシーンに登場します。この「たき火」の曲から名前をとったそう。スゴイな。
この先、あたるとの交流は描かれますが、この曲自体のことはあまり描かれず、「なぜ由来がこの曲というエピソードを盛り込んだんだ・・・?」とちょっと考えました。
事故は2年前の夏の終わり、描かれているのはそれから2年後の夏の初め。その間のことはちょくちょく描写されますが、夏以外の季節の描写はここまでほぼありません。
これは事故が起きてから今まで、主人公の中では時間が動いていなかったからではないでしょうか。
2年の月日や新しく出会った人々との交流が、少しずつ心を癒していった。そしてあたると出会ったことをきっかけにやっと季節が少しずつ動き出すので、ようやく差し込んだ冬という季節の象徴として、あたるたちの名前の由来は冬の代表曲・「たき火」なのではないでしょうか。
3.遺言 / 柳ジョージ
超良い曲なんですよね~~~これ・・・笑
これは主人公があたると京都の大文字山に登り、もし亡くなるのが自分で、生きているのが彼だったとしたら、自分をどんな風に想っていてほしいか・・・というのを語るシーンに登場します。
「つまり、それって君の魂の栄養のためでもあるわけだね。ベイブリッジの上から流れ星が見えたら、俺の名前をコールミーアゲインだね。」
この「つまりこうだよね」を歌詞でたとえる感じが、音楽好きあるあるという感じで地味に大好きです。笑
でも実際に聞いてみるとこの曲がタイトルに反してきっぱりと前向きで美しく、ごく純粋な気持ちで彼に生きて幸せでいてもらいたかった、物語中のその思いを考えると、切なくも温かい気持ちを代弁してくれているような気になってきます。
4.宝島 / 町田義人
こんなに悲しい物語で、あえてこの曲を最後に持ってくる演出がにくい・・・。
これはラスト、事故後に通い始めたバーのマスターから、重大な事実を打ち明けられるシーンで登場します。
このシーン、そしてこの曲があるのとないのとでは物語がまったく違ってくる、と言っても過言ではないほど大事な部分です。
私がたったひとつ持っている憧れのような輝くもの、それは、どこのだれにも消せはしない。
「行く手にはみんなまだ知らない、ふしぎな昼と夜とが待っているだろう」
ここの考察は、読んだ方にはぜひご自分の考察や感想を大切にしていただきたいので、白文字で掲載しようと思います。
気になる方は反転して読んでみてください◎
↓ココ
重さを背負って歩いていくこの道のり、別れも悲しみも避けられないこの道のりには、それらを凌駕する圧倒的な生の喜び、美しさがある。
いずれ愛する人が待っている夢の島へたどり着くまで、だれにも予想さえできないこの美しい道のりをめいっぱい味わおう。
誰もが何かを背負っているのなら、もはや独りではないのだから。
というラストなのかな、と私は解釈しました。
だれにも奪えない憧れ・・・それはやはり、「生の喜び」ではないでしょうか。
↑ココまで
アウトロ
いかがでしたでしょうか!
今回私自身も記事を通して、小説は音楽を通してぐっと世界が深まるもの、とより実感しました。
小説を深めるにも、音楽を深めるにも、この記事が少しでもお手伝いができていたらうれしいです◎
「スウィート・ヒアアフター」やご紹介楽曲もぜひ読んで・聞いてみてくださいね!
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
また次の素晴らしい音楽でお会いしましょう♪
Have a nice music!
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